受け身をとって欲しいはなし
笑い話通り越してただの注意喚起なんですけど「転ぶ時は必ず地面に手をつけよ」というはなしを聞いてくれ。
わたしは最寄駅に降り立ち歩いていた。風は強く、明日の気温が滅法下がることを予感させた。何十年か前は均されていたであろうインターロッキングは通勤する人間の歩行により段差が生まれ、あるいは地震やら気象やらで風化して、週に一度は躓いてしまうようなボコボコとした道となっていた。わたしは強い風に首をすくませ歩いていた。
その時だ。
背後から、左斜め前に向かって、人間が吹っ飛んできたのだ。
まず、スマホが前方に吹っ飛んでいくのが見えた。次に水筒が落下する甲高い音、そうして最後に、顔面から舗装された道路に全体重を乗せて叩き落ちる人間が見えた。
震える。
怖い。
落下距離関係なく、飛び降りと同じ状況だった。
わたしより背が小さい女性だった。彼女は転んでから痛みにのたうちまわり、大丈夫ですかの言葉に反応もしてくれなかった。
スマホや水筒を拾い集め彼女の前に置いたが、ようやく上げた顔は口から血を流し、眉間を抉るように擦りむき、額も真っ赤になっていた。
怖い。
顔面から落ちるってこういうことだ。
下手すりゃ前歯折れてるやつだと思った。
強風の中わたしはポケットティッシュを渡し、とりあえず救急車とかいらないなと判断して、お気をつけて……とだけ声をかけて去った。
彼女は呆然と座り込んでいた。
という怖いことがあったので、みなさんは必ず、手をついて、転んでください。人間の質量が放物線を描いて飛んできて顔面から落ちるのは怖いです。気をつけてください。
わたしは最寄駅に降り立ち歩いていた。風は強く、明日の気温が滅法下がることを予感させた。何十年か前は均されていたであろうインターロッキングは通勤する人間の歩行により段差が生まれ、あるいは地震やら気象やらで風化して、週に一度は躓いてしまうようなボコボコとした道となっていた。わたしは強い風に首をすくませ歩いていた。
その時だ。
背後から、左斜め前に向かって、人間が吹っ飛んできたのだ。
まず、スマホが前方に吹っ飛んでいくのが見えた。次に水筒が落下する甲高い音、そうして最後に、顔面から舗装された道路に全体重を乗せて叩き落ちる人間が見えた。
震える。
怖い。
落下距離関係なく、飛び降りと同じ状況だった。
わたしより背が小さい女性だった。彼女は転んでから痛みにのたうちまわり、大丈夫ですかの言葉に反応もしてくれなかった。
スマホや水筒を拾い集め彼女の前に置いたが、ようやく上げた顔は口から血を流し、眉間を抉るように擦りむき、額も真っ赤になっていた。
怖い。
顔面から落ちるってこういうことだ。
下手すりゃ前歯折れてるやつだと思った。
強風の中わたしはポケットティッシュを渡し、とりあえず救急車とかいらないなと判断して、お気をつけて……とだけ声をかけて去った。
彼女は呆然と座り込んでいた。
という怖いことがあったので、みなさんは必ず、手をついて、転んでください。人間の質量が放物線を描いて飛んできて顔面から落ちるのは怖いです。気をつけてください。