可逆圧縮うそつきごっこ

悪夢でしたね。

以下ネタバレ。



まずこいつは三時間ある。
二時間四十分はストーリーのない「あったらかなり嫌な不安」の映像化だと思って欲しい。

ミッドサマーぶりのアリ・アスターなので比較対象がそこになるわけですが、ミッドサマーはまだ正気の人間がいてストーリーがあるのでとっつきやすいと感じた。ボーは正気の人間という拠り所というか足場が無いから何が悪夢で現実かわからなくて、そこが面白くもあり苦痛にもなると思う。
ボーはおそれているは四つの部にわかれて構成されている。

1・アパート
強迫観念をこれでもかと映像にしている。
どこかの誰かの誕生風景から始まり、セラピストとの対話、水を必ず飲まないと服用してはいけない薬、飛び降りようとする男と野次馬、路上にある死体、毒蜘蛛がどこかに潜んでいるから見つけたら通報するようにという貼り紙、治安の悪い街、物乞い、窃盗、バースデーボーイを騙る全裸の殺人犯、身に覚えのない騒音と壁ドン、寝坊、乗り遅れる飛行機、部屋の鍵を挿したままにしていたら盗まれ、断水で水は出ないし、カードは凍結されて決済ができず通報されるし、オートロックを開けていたら浮浪者がなだれ込み、鍵をかけることができない自室は荒らされるし、バスルームの天井には知らない男がへばりついていて、全裸で通りに逃げたら滅多刺しにされた挙句車に轢かれる。
何が現実かと聞かれれば、全裸のおっさん二人がもつれ合い滅多刺しにされる部分。これが推しカプのエロ本だったら盛り上がるが興奮する要素はない。


2・グレースとロジャーの家
娘がヤク中でミッドサマーの妹程度に邪悪。でも思春期の娘のベッドに知らんオッサンが寝てたら発狂するわけじゃん？？死んだ兄に呪われてるし。監視カメラあるし。他人のノートPCに滝ゲロ吐くシーンが一番堪えました。


3・森
途中でアランウェイクみたいになってた。爆発オチなんてサイテー！笑っちゃったけど。


4・母親
正直これがなかったら面白いとは言えなかった。
核の部分を為すモナという母親、齢70にして8センチのピンヒールの社長という女傑。顔が良い。子供を愛し、愛されず、憎しみを響かせる女。最高に推せた。
ここからトゥルーマン・ショーの様相を呈してくるのだけれど、裏も真実もなく悪夢は悪夢でしかない的な。突然ガツンと「正気！」みたいなのをぶつけられる瞬間があって、それがわたしにとっては首を絞めているシーンだったのだけれど、あの部分はよかった。
全く興奮しない濡れ場があります。


まとめとしては、えーつかがセッッッするときに腹上死しなくて良かったなと思いました（幻覚）
映像としてはおもろいけどおすすめはあまりしない。胸糞ハイチューンストーリーを望むならミッドサマー見てくれって感じ。
不安が他人事じゃないからお薬飲んでる時にみちゃダメだなと思った。