可逆圧縮うそつきごっこ

そう……じゃあまずはマインレディから話すわね。
あれはあたし達姉がまだ学院二年生だった2017年の頃だった……あの頃から確かにももちゅかは覇権だったんだけど、まだ今ほど姫宮の男気ゲージが溜まってなかったの。マインレディは使用人の真似事をする姫宮と天祥院を落とし穴に嵌めようとする姫宮妹という濃い姫宮家のストーリーがあるんだけど、途中で『あたし』にとっても、生まれて初めての、大好きな友達司クンが、姫宮の家に遊びに行くのね。ここで普段から不仲アピールしてる友達がいない司くんが休日に幼馴染の家に日常的に遊びに行っている、使用人が慌てることがない様子から割と頻度も高い、おまけに天祥院に殺意剥き出しの姫宮妹がなんのリアクションもしていないことからかなり迎合されているのではないかという推測ができちゃう訳でしょ。そんなことを知る由もないあたし達の司クンは、使用人の真似事をする姫宮を笑い、遊んでやろうとするわけ。伏見にも負けず劣らずSっ気が強い司クンはここでしか拝めないから助かるわ。まあ途中で調子に乗ったところで天祥院の邪魔が入るんだけど。そこで貴族の作法を教えてもらうことになり、今まで散々紫之との比較やら貶されをされてきたにも関わらず天祥院に無碍にされないことに不審がる司クンだけど、何かを察したのかかつての王のように皇帝陛下の剣になるとか言っちゃうの。訳わかんないわよね。でもここは間違いなくえーつかだったわ。
それから時は流れて2022年3月、ホワイトブリム……通称潮干狩りイベントがやってくるわ。ここではかつて使用人の真似事をしていた姫宮に対し、あわやメイド服を着せられそうになる司クンが拝めるの。おまけに普段は口喧嘩する姫宮が、ボクほとじゃないけど似合うかもよ♪とか超ノリノリなわけ。あたしたちは、濃厚なももちゅかを提示される……なんやかんやあって、潮干狩りイベント真っ最中。天祥院が殺されたのではないかと泣きじゃくる姫宮に叱咤する司クンの姿は、まさしく朱桜本家当主の貫禄があって、これが我々が望む本物の宿敵関係のももちゅかであるとはっきり示されたわよね。ももちゅかは覇権、それは学年が一つ上がっても変わらない事実。
これからあたしたちは、生徒会長姫宮と会計の司クンが紡ぐ夢ノ咲シンフォニーを浴びることになるの。よろしくね。